大人気のアクソパーから待望のニューモデルが登場!|アクソパー29XCクロスキャビン

2025.06.12

フィンランド発、新時代のパフォーマンスボートとして人気を集めるアクソパー(Axopar Boats)。2014年の創業から、わずか10年あまりで世界中のマーケットにおいて人気を確立した。

そのロングセラーモデルのアクソパー28がフェードアウト。一方、新たにラインアップに加わったのが「アクソパー29XCクロスキャビン」である。

新しい時代のアクソパーの方向性と魅力が垣間見える、「新定番」とも呼ぶべきこのニューモデルをじっくり見ていくことにしよう。

 

2024年に登場したアクソパー29。そのスタイルは、これまでのアクソパーのいいとこどりで、かつ最新の技術やデザインが盛り込まれた意欲作だ。

同じハルを共用し、上部構造物に違いのある三つのバージョンが用意されていて、今回日本に入って来たのはパイロットハウスを備えた「XCクロスキャビン」という仕様(上写真)。ほかの二つはオープンタイプで、大型の屋根を備えた「サントップ」、操船席を覆うハードトップを設けた「CCX」というラインアップが構成されている。

アラウンド30フィートクラスのモデルは、世界的に見てもマーケットの需要は高く、コンペティターは少なくない。そんな中で、この29は欧米の著名なアワードでウイナーをいくつも獲得するなど、さっそく高い評価を得ている。

 

桟橋に舫われた実艇を見ての第一印象は、ずいぶん大きいなあということ。エンジンを除く全長は9.31メートルと、28(8.75メートル)と50センチほどしか変わらないにもかかわらず、1サイズか2サイズは大きく見える。シャープでありながらも、サイズ以上のボリューム感を持ち合わせている。

細長い船体で乾舷が低く、直立気味のステム、角ばったパイロットハウス、船底には二つの段差を設けたステップトハルといったデザインは、いかにもアクソパーそのもの。ただ、ディーラー(オカザキヨット)の担当者によれば、28のリニューアル版というわけではなく、全く新しいサイズレンジにデビューするモデルであり、細部に至るまで一から設計し直されたものだそうだ。

 

アフトコクピットのレイアウトは、いくつかの中から選択することが可能。試乗艇は全面をフルに使える「オープンアフト」という仕様で、幅が約215センチ、前後長さが約120センチという広いスペースがウリ。釣りはもちろん、いろいろなウオーターアクティビティーを楽しんだりと、使い勝手は抜群によさそうだ。

このほかに、パイロットハウス後部の壁面にベンチシートを設けた仕様、同じくウエットバーを設けた仕様があるほか、アフトコクピットの中央に大きくサンベッドを設けたタイプも用意されている。この場合、サンベッドの下には同時にアフトキャビンが設けられることになる。

 

アフトコクピットの両サイドには、深さ50センチほどのストレージが備わる。フェンダーやロープなどを収納するのに便利だし、イケスに改造することも可能。また、上部にクッションを置けば腰掛けられる場所にもなる。

 

船首エリアへは、左右の通路から行き来するウオークアラウンド仕様。パイロットハウスはオフセットされておらず、左右の通路幅はどちらも同じで約35センチと、十分な余裕がある。乾舷は低めとはいえ、ハンドレールなどつかまる場所も多数あり、安全面への配慮も抜かりがない。

左舷側および船首に連なるL字形のシート、中央にはテーブルという船首エリアのレイアウトは、アクソパーではおなじみのもの。オプションで右舷側にもシートを設置し、U字形とすることもできる。

さらに29では、ハウスの前面にもベンチシートが設けられた(28にはなかった)。4人以上がくつろげる居心地のよいスペースとなっているが、これは決して停泊中に限るものでないこともポイントだ。取材時は40ノットを超える速度で走ったりを繰り返したが、このエリアは波しぶきを浴びることもなく、きわめてドライであった。

 

ハウス前面のシートの座面を持ち上げた場所には、28では個室トイレが設置されていた。しかし、この29では、そのスペースをさらに広げて一つのキャビンとしている。

大人2人が十分横になれるだけのスペースがあり、トイレやシンクといった設備もそろう。キャビンが一つ増えたということは、このボートの大きなセールスポイントになるはずだ。

 

船内には、パイロットハウスの左右のスライドドアから出入りする。このドアは面積が非常に大きく、開口部は幅88センチにもなる。

出入りしやすいことはもちろんだが、両側のドアに加えてルーフトップを全開にすると、オープンボートさながらの開放的な船内空間となる。

 

視覚的な部分では、パイロットハウスの全面を囲む大きなウインドーも、この開放感に大きく寄与している。特に後部は全面がガラス張りとなり、操船中の視界は実に良好。前列に操船席と助手席、後部にベンチシートという配置だが、後部座席に座っているときにピラーで視界を邪魔されることもなく、パノラマで海の景色を楽しめるようになっている。

操船席と助手席は回転することが可能で、180度向きを変えれば後部座席と対面する形となる。その間に設置するテーブルが、今後オプション艤装として用意されるようだ。

 

いかにもフィンランド艇らしい、細かな造作や工夫にも注目したい。

操船席と助手席を跳ね上げると、座面下からシンクとカウンターが現れる。手を洗ったり、ちょっとした炊事をするには重宝するだろう。

 

後部座席の座面と背もたれを跳ね上げると、壁面に棚、その下には大きな収納スペースが現れる。

面白いのが、この収納スペースが船外からもアクセスできるということ。アフトデッキの床下のストレージとつながっているので、ロッドやボートフックなど、長物の収納にはぴったりのスペースとなっている。

 

スポーツカー感覚のドライビングが楽しめることでも定評のあるアクソパーだが、ヘルムステーション周りはこれまで以上に洗練された印象だ。

航海機器を設置するためのスペースはコンソールの左右いっぱいまで拡張され、12インチディスプレーなら、ゆうに3基は並べられる。スイッチ類が立ち上がった場所に設置されるなど、これまで以上に操作性がよくなった感を受けた。

 

横浜ベイサイドマリーナ沖で行った試乗時は、風波も弱く絶好のコンデイション。試乗艇はマーキュリー・ベラード350(350馬力)の1基掛け。これ以外に、最大で200馬力の2基掛けという選択肢も用意されている。

2名乗船での最高速度は44ノット超。メーカー発表の巡航速度は22~32ノットとなっていたが、気が付くといつの間にかスピードが出ているといった感じで、あらためて安定した走りを感じた次第だ。筆者はこれまでに、22から45までアクソパーのラインアップの全てに試乗してきたが、28というよりは、むしろ37の感じに近い安心感のある乗り心地だと感じた。

 

トリム調整はオートトリムに任せたが、他のアクソパーのモデル同様、航走中に船首が上がるようなことがほとんどなく、とにかく操船しやすい。

また、360度の視界が確保されているといっても過言ではないため、ノーストレスでドライビングを楽しめる。船内でのカメラボートの引き波を越えるなどしてみたが、波当たりの柔らかさも変わらず健在であった。

 

超ロングセラーモデルとして大ヒットを記録してきた28がフェードアウトしたタイミングで、新たにラインアップに加わった29。それだけに、今のアクソパーの“BEST”が注ぎ込まれた意欲作であることは、容易にうかがえる。

その操船しやすさはエントリーユーザーには持ってこいの一艇だと思えるし、一方で乗り物としてのパフォーマンスの高さはベテランユーザーも満足するだろう。遊び方、楽しみ方に縛られず、多目的に使える新時代のクロスオーバーボートといえそうだ。

 

(文=安藤 健/舵社 写真=松本和久 協力=横浜ベイサイドマリーナ)

 

SPEC

全長:9.31m ●全幅:3m ●喫水(プロペラ下部から):0.9m ●船体重量(エンジンなし):2,900kg ●駆動方式:船外機 ●エンジン(試乗艇):マーキュリー・べラード350350PS/261kW×3 ●燃料タンク:400L
価格:問い合わせ

 

(問い合わせ)

オカザキヨット
TEL: 045-770-0502(横浜)
TEL: 0798-32-0202(西宮)
http://okazaki.yachts.co.jp/

 

舵社公式YouTubeチャンネル「Kazi Movie」の解説動画もご覧ください

 



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