ヤンマーとソニーが合弁会社を設立|水中ロボット(ROV)の開発へ

2025.10.07

ヤンマーホールディングスとソニーグループは、水中センシングに関する技術開発と、その社会実装を目的に合弁会社「ヤンマーブルーテック株式会社」を9月8日付で設立。10月1日から事業をスタートした。

ヤンマーは、「A SUSTAINABLE FUTURE ~テクノロジーで新しい豊かさへ。~」をブランドステートメントに掲げ、養殖技術の研究や海洋設備の開発などを通じた海洋環境の維持・保全に取り組んでいる。
一方、ソニーは、「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」というPurpose(存在意義)のもと、多様な事業を展開中。同社の強みの一つであるセンシング技術は、エンターテインメントやモビリティーなど幅広い分野に応用されており、地球環境や社会課題の解決にも貢献している。

 

この合弁会社では、海洋生態系の保全や海洋インフラ点検における人手不足問題など、海洋の持続可能性に関するさまざまな課題の解決に向けて、両社の知見を融合した新たな技術やソリューションの創出に取り組むとのこと。
その第一弾として、海中調査や船底洗浄作業で活用されるROV(Remotely Operated Vehicle:遠隔操縦無人潜水艇)の高度化と実用化に取り組む研究プロジェクトを立ち上げ、共同での技術開発と実証実験を進めていく。

 

「この度、『テクノロジーの力で豊かな海を表現し、守り、育む』という思いのもと、合弁会社設立に至ったことを大変うれしく思います。ROVの高度化と実用化に寄与する技術開発は、お客様から期待の声を多く頂戴しており、さまざまな海洋課題の解決に大きな意義を持つものです。今回の協業を通じ、テクノロジーを通じて海洋環境保全と持続可能な産業の発展に貢献してまいります」(ヤンマーホールディングス株式会社 取締役 技術本部長/CTO 道上 英二氏)

 

「海洋生態系の保全に寄与する最先端ROVの実現に向けた協業を通じて、ソニーが有するイメージセンサーや 3 次元空間センシングなどの技術の社会実装を推進してまいります。今後もパートナーとの共創を通じて、テクノロジーの可能性を広げ、地球や社会の課題解決への貢献を目指します」(ソニーグループ株式会社 代表執行役 CSO 御供 俊元氏)

 

第一弾プロジェクト:船底洗浄ROVの技術開発

近年、船舶の運航にともなう温室効果ガス(GHG)の排出による地球環境の悪化や、船体付着生物の移動が海洋生態系にもたらす影響が問題視されている。国際海事機関(International Maritime Organization: IMO)による法整備や環境規制により、海運業者も船体付着生物への対処が厳格に求められるようになっている一方、現在はダイバーによる洗浄が主流となっており、人手不足や安全確保などが課題となっている。

そんな背景の中、ヤンマーグループでは、高圧水噴射式で業界最高クラスの洗浄速度を実現する船底洗浄ROVや、デブリ(船体から除去した汚れ、付着生物など)をマイクロメートル単位でろ過回収できるデブリ回収装置の開発に取り組んでいる。また一方、ソニーは、動体歪みのない高感度な撮影が可能なグローバルシャッター方式のイメージセンサーや、濁りや浮遊物など海中環境に適応した画像処理技術、リアルタイムでの自己位置推定技術などを有している。

 


ヤンマーグループで開発中の船底洗浄ROV(合弁会社で開発中のROVの実証機ではない)。ヤンマーグループでは、船底洗浄ROVおよびデブリ回収装置の開発を2021年に開始しており、2023年からは(一社)日本舶用工業会の新製品開発事業として、(公財)日本財団からの助成金を受けて実施している

 

両社の強みとノウハウを生かした最初のプロジェクトでは、ヤンマーが開発するROVにソニーの要素技術を実装することで、水中映像の鮮明化や3Dデータ化、自己位置の把握など、従来よりも高効率なROV運用の実現を目指す。その結果、船底洗浄作業を効率的にし、人に依らない安全かつ安定した運用が可能な新たなソリューションの展開につなげていく。水中ロボットが船底を掃除する──そんな未来はすぐそばまで近づいている。
2024年5月一般社団法人 日本舶用工業会による実証実験ベース。2025年10月時点、ヤンマー調べ。

 


水中3Dセンサーのプロトタイプ


グローバルシャッター方式のイメージセンサー

 

(文=舵オンライン編集部 写真提供=ヤンマーホールディングス)

 


■合弁会社の概要
会社名:ヤンマーブルーテック株式会社
代表取締役:不破一郎(ヤンマーホールディングスより出向)
設立:2025年9月8日
事業開始:2025年10月1日
水中所在地:大阪府大阪市北区茶屋町1-32
資本金:38,830万円
出資比率:ヤンマーホールディングス90%、ソニー10%
事業内容:水中センシング・ロボティクス技術の開発および社会実装

○ヤンマーホールディングス
https://www.yanmar.com/jp/about/
○ソニーグループ
https://www.sony.com/ja/

 


 

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