SailGP艇に乗った日本人女性(2)|高野芹奈

2021.11.30

F50に乗った日本人女性、第2回は高野芹奈選手!

フォイリングカタマランF50による世界最速サーキット、SailGP。10月に開催されたスペイン大会から、ウィメンズ・パスウェイ・プログラムによって1人の女性クルーの乗艇が義務付けられた。日本からは、厳正なトライアルを経て、ジョインした梶本和歌子選手と、高野芹奈選手。前回は、梶本和歌子選手の手記を掲載。今回は、高野芹奈選手の手記を紹介します。Kazi 12月号に掲載された記事を、完全版でお届け!

(タイトル写真=photo by Ricardo Pinto for SailGP/高野芹奈選手) 

 

 

photo by Beau Outteridge for SailGP

 

Sena Takano
オンとオフを使い分ける 日本チームメンバーの裏話

 

 偉大なる先輩たちの教え

日本チームは、いつもコンテナの中に机と椅子を準備してミーティングを行います。話される内容は、とても難しくて私は理解するだけで必死です。SailGPは、多くのデータやシステムを駆使しながら速く走れるように研究されています。毎回、セーリングを終えて陸に帰ってくると、その日の海上トレーニングのデータを見ることができます。それをチームで振り返り、感覚とデータを擦り合わせます。いつもデータを見る時、みんなの顔が険しくなっているのを感じます(笑)。 

ミーティングなどの時間は、みんな真剣モードですが、それ以外の時間は、とてもリラックスしています。特に、森嶋ティムと高橋レオは、いつも2人で楽しそうに一緒にいます。ベースにいる時も、海上にいる時も、彼らの笑い声がよく聞こえてきます。私はよくティム、レオ、笠谷勇希さんに難しいことは日本語で教えてもらっていて、助けられています! 

SailGPに参加して、フォイリングやウイングトリムなど、セーリングに関する知識を多く学んでいますが、特に私が大きく刺激を受けているのが彼らのコミュニケーションです。限られた時間の中で多くの情報交換を必要とされる彼らにとって、端的な言葉で会話することは非常に重要です。 

そんな会話を間近で聞くことができるので、本当に勉強になります。特にF50という、高度なヨットに乗りながら行われる会話は洗練されていて、聞いていて気持ち良いほどです。私がF50のヘルムを持たせていただいた時も、コミュニケーションは重要な部分でした。5人で息を合わせて船を繊細に操るために、的確な言葉が必要となります。その言葉の選び方なども、実際にクリス・ドレイパーから教えてもらい、本当に素晴らしい経験でした!

 

女性が活躍するチャンス 

世界には多くの素晴らしい女性セーラーがいる中で、日本人を代表してSailGPに参加できたことを、非常に幸運に感じています。各国の優秀な女性セーラーと意見を交わし、仲良くなることで、いろいろと女性セーラーならではの問題を考えるようになりました。 

特に、女性がプロのセーラーとして活躍する機会は男性よりも少ない実情や、その中で女性セーラーのレベルをいかに底上げしていくのかなど、リアルな問題が多くあります。今回、世界トップレベルのイベントであるSailGPが女性育成プログラムを発足したことは、非常に大きな第一歩でもあり、その代表としてプログラムに参加できることに責任を感じます。 

まだまだ、発展途中ですが、女性が男性同様の機会を得ることが出来る、そういった社会のシステムが開発されるよう、私なりに勉強し行動していきたいです! 

今後は、SailGPに参加するセーラーのように、オリンピック種目、マッチレース、モス、ウイングフォイルなどに挑戦し、知識や技術が豊富にある選手になりたいと思っております。また、SailGPが掲げるような、スポーツにおける持続可能性、多様性、包括性への取り組みにも積極的に参加し、1人のアスリートとして、未来へ何か少しでも良い影響を与えられるような人物に近づいていきたいです。今後は、趣味でウイングフォイルを練習しながら、オリンピックにもう一度挑戦したいと思います。 

 

(文=高野芹奈)

高野芹奈:2016 年リオ五輪、2021年東京五輪49er FX級日本代表。420 級でも世界で活躍。 

 

 

photo by Beau Outteridge for SailGP

コーチのジョー・グランフィールド。論理的にレース結果を分析する

 

photo by Beau Outteridge for SailGP

F50のハルを整備する高野芹奈選手。セーリングだけでなく、多くの知識を吸収している

 

photo by Ricardo Pinto for SailGP

スペイン大会初日の本戦に搭乗した芹奈さん。なんと笠谷選手と対面でグラインダーを担当。パワフルに貢献した

 

photo by Beau Outteridge for SailGP

F50をドライブする芹奈さん。なんと笑っている! 末頼もしいセーラーである

 

photo by Beau Outteridge for SailGP

レース後、艇体を水洗いする芹奈さん。すでにチームメンバーとしてガッツリと活動している。次回、オーストラリア戦もがんばってほしい!

 

photo by Beau Outteridge for SailGP

酸素ボンベ付きライフジャケットにハーネス。SailGPのセーリングウエアに身を包む。世界レベルのフォイリングサーキットで活躍する女性セーラーの草分けとなってほしい!


 

◇プチ対談◇
F50の上では何が起きている?

バミューダでSailGPに合流した2人のプチ対談。F50の乗艇を終えた2 人の会話を紹介します。

(聞き手=渡部雄貴)

 

高野芹奈(以下、芹奈):「和歌子さんはフライトコントロールやったと思うんですが、コントローラーを船の上で操るのは、かなり難しかったですか?」 

梶本和歌子(以下、和歌子):「うん、思っていた以上に難しかったよ! ツイストグリップを動かすと、ほぼ同じタイミングで風下側のダガーボードが動くので、そのリズムをつかむのが難しかったね。最初はほとんどフォイリング出来なくて、全員ずぶ濡れにさせてしまい、みんなの冷たい目線が痛かった・・・笑」 

芹奈:「やっぱり超難しいポジションなんですね! 実際に座った状態でコントロールしながら見てる場所はボートとダガーですか?」 

和歌子:「ボートのバウと風下側のダガーボードを見てコントロールしていたよ。ツイストグリップの横には、ディスプレーがあって、ボートスピード、ダガーボードレーキ、ラダーレーキなどが表示されているけれど、全く見る余裕がなかった。本当はラダーレーキもコントロールするのだけれど、それもしていない(笑)」 

芹奈:「なるほどなるほど。和歌子さんでそんな感じなら、フォイル経験の少ない私がやったらジェットコースターみたいになっちゃいそうですね(笑)」 

女子会トークというには、あまりにも内容がマニアック。これからのお二人の活躍に期待します! 

 

photo by Thomas Lovelock for SailGP

 

2回にわたって紹介した、梶本和歌子選手と高野芹奈選手の、F50搭乗記はいかがでしたでしょうか? 最速サーキットで活躍する女性セーラーに、これからも注目していきたいと思います。女性よ! 世界へはばたけ! そして、フォイリングシーンを席捲せよ!

 

(文=Kazi編集部/中村剛司)

 

※月刊『Kazi』12月号に関連記事あり。バックナンバーおよび電子版をぜひ 

 

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