月刊『BoatCLUB』の奇数月号で連載している「孤高の釣り人Mr.ツリックの ふらっと貸しボートに乗りにきた」では、料理上手な釣り人Mr.ツリックが、関東を中心に全国の貸しボート店を巡り、その地、その季節に合った釣りを楽しむ様子をお届けしています。
今回は、『BoatCLUB』2023年7月号に掲載された「シシュウカブラで初マダイ」を一部再編集したダイジェスト版をお届けします。
※取材は2023年4月に実施。記事内に掲載されている写真の内容などは、取材当時のものです。
みなさまこんにちは、Mr.ツリックです。
今号のゲレンデは東伊豆の網代(あじろ)であります。東伊豆のレンタルボートは、網代多賀にあるボート屋さんが東伊豆で一番東京に近い店だ。そして今回、オジャマした内田丸さんはその隣の網代港手前にある。ちなみに、東京からの途中にある真鶴半島にもレンタルボートはあるけれど、神奈川県内なので伊豆ではなく相模ですナ。
さて、今回の釣りには明確な目標があります。それはマダイを釣ること。しかも小生発案のシシュウカブラで。略せばシシュウマダイですナ。実は、シシュウカブラでは、ヒラメをはじめ、カサゴ、アカハタ、サバ、イナダ(ブリの若魚)、マゴチ、ホウボウ、イトヨリダイなど、さまざまな魚をゲットしてきたけれど、いまだマダイを釣り上げていないのだ。
この内田丸の小屋はいつからあるんだろう。かなり古くから国道を走る車窓の風景に溶け込んでいるゾ。そういえば、今回はいつものオイチャンがいなかったなぁ
上下船をするのはボートを下ろすスロープ。足元がとても滑りやすいので十分注意をすること。もちろん、スタッフのアシストはある。冬は長靴が必要ですヨ
(左上)あらかじめ、エサと一緒に容器の中へシシュウカブラを漬け込んでおく。すると、シシュウ糸にエサの脂と匂いが染み込み、視覚とともに集寄(しゅうき)効果もグンバツですゾ
(右上)マダイねらいなので、付けエサにはホタルイカと小型のエビを用意した。ちなみに、サンマの開きの切り身はカサゴやハタなど、根魚の特エサになりますナ
(左下)シシュウカブラ用のオモリは、通常は中通し玉オモリの3~12号を用意する。潮の速さにもよるが、当日は水深40メートル前後で12号がちょうどイイ感じだった。ラインはPE0・8号
(右下)
ホタルイカのハリ付けは、ハリスが短いほうのハリでエンペラの先端を刺し、長いほうは目の間に刺す。ハリの間の長さがイカと合わない場合はイカの筒と頭を切り離してもイイ
まずは、シシュウカブラの説明からですナ。簡単にいえば、シシュウ糸で作ったタコベイトみたいな物です。なので、シシュウベイトというべきなのかもしれません。
イナダなどの青ものをねらうなら、エサを付けずにルアーのように使う。ただ巻きでいいと思います。また、カサゴなどの根魚は落とし込み直後にヒットするため、ゆっくりフォールさせて根掛かりしないように大きくシャクりながら移動し、アタリがなければ、数メートル巻き上げて再度フォールさせる。
マダイやヒラメは、同じくゆっくりフォールさせてから、海底から50センチ上でボトムキープ。アタリがなければ小さなシャクリか、ただ巻きで5メートルほど上まで探る。それの繰り返しですかネ。
次にエサですが、干物のサンマの開きの切り身、小エビ、ホタルイカなど。スーパーで買ったサンマの開きを4×1センチ程度の短冊でほぼほぼ皮だけのペラペラの切り身にする。小エビはシッポを切りとり、その断面からエビがまっすぐになるようにハリを通す。ホタルイカは上バリをエンペラの先端に刺し下バリは目の間に刺す。または、筒の部分をはずして頭とゲソだけを使ってもいい。
いずれにしても、エサが回転しないようにまっすぐに付けるのがミソです。あと、ホタルイカ以外のエサは上バリだけに付ければ抵抗が少なくて釣りやすいですヨ。
さらに、エサの容器にシシュウカブラも漬け込んでおき、匂いと脂をたっぷりと吸わせておく。ただ、釣っていると匂いも脂も抜けるため、2組を漬けておきローテーションすればいい。
釣る場所は、エンジン流しができるのであれば、魚礁や大きな根周りがイチオシ。一方、ドテラかシーアンカー流しなら、比較的なだらかなカケアガリや岩礁帯が釣りやすい。どちらにしたって、魚がいなけりゃ魚探があったって釣れねーよー。
タックルは一つテンヤザオにスピニングリールが最適ですが、落とし込みをゆっくり演出するならベイトリールでサミングするといい。ロッドは、オモリ負荷15号のマゴチザオやメバルザオなどでも転用できます。ラインはPE0.8号にリーダーはフロロカーボンの2号。
水中でしなやかに揺らめく姿となまめかしい光沢が特徴の見た目と、シシュウ糸に染み込んだエサの脂と匂いで悩殺するシシュウカブラは最強なのですヨ。
"現場2号"の名の由来にもなったブルーシートの端がほつれてきた。そろそろ作り替えの時期ですなぁ。材料の買い出しと組み立てでも、半日あれば作ることができる
海面から顔を出したのはかわいいマダイ。ホタルイカの目の間に刺したハリに掛かっているが、口の端にフッキングしているのは本来のタナより下でヒットしたためか
小さいながらも正真正銘の天然マダイですナ。とりあえず、シシュウカブラでマダイを釣るという目的を果たしてひと安心。網代でマダイを釣ったのは何年ぶりかしら
いきなり網代の話に戻りますが、9時ごろに多賀沖で待望のマダイを釣り上げ、サァこれから追釣だと意気込んでいた矢先。風が強くなってきて戻れなくなるから港の近場で釣れと、内田丸のスタッフに呼び戻された。戻ってみれば確かに港の手前に暴風帯が発生していた。
しかし、近場も強風で満足な釣りなんてできやしない。そばに係留用のブイが二つ浮いているが、これは手漕ぎボートがすでに舫っていた。そもそもこのブイは手漕ぎボート用ではなかろうか。そういえば、以前はこのあたりに小型定置網があっていいポイントだったなぁ。
なんてぇコトで11時前に撤収するハメになってしまった。昼すぎまで釣りができていれば、もう少しマシな釣果になったと思われた状況でしたナ。
次回は順番的に相模湾ですかネ。そういや以前は鎌倉にも貸しボートがあったなぁ。
11時前の撤収を余儀なくされたためでしょうか、ボート店からお土産をいただいた。小屋の裏で干していたマイワシのミリン干しとメカブ。手作りなのがウレシイ。美味でした
「海釣図V」(マップル・オンより転載)
須藤恭介(すとう・きょうすけ)
愛称、Mr.ツリック。長年、月刊『ボート倶楽部』の筆者として活躍。現在、同誌に連載中の「孤高の釣り人Mr.ツリックの ふらっと貸しボートに乗りにきた」では、釣りだけでなく、釣果料理のノウハウを紹介している。
(文=須藤恭介[Mr.ツリック] 写真=幸野庸平/舵社)
この連載では月刊『ボート倶楽部』2021年9月号でも訪問した内田丸。手漕ぎボートで行ける範囲でもマダイは釣れるそうだが、今回は2人乗りの2馬力船外機付きを借りた。2馬力にはほかに3人乗りもある。ゲレンデには定置網や航行禁止区域がいくつかあるので、スタッフの注意をよく聞こう。
内田丸
[住 所]静岡県熱海市下多賀444 大縄海水浴場隣
[連絡先]090-8860-7488
[料 金]5,000円~
[定休日]1月1日と2日
あわせて読みたい!
●魚探の見方vol.11 ジギングでカンパチをねらっていたときの反応