堀江謙一さんが2022年に太平洋横断に挑む19ftヨットが進水

2021.12.17

“太平洋ひとりぼっち”から60年

すでにお伝えしたように、日本のヨット界のレジェンド、堀江謙一さんが、1962年の世界初の“太平洋ひとりぼっち”単独無寄港太平洋横断から60年を機に、太平洋横断に挑戦する。使用艇は1962年の航海とほぼ同じサイズの、エンジンなしの19ft艇である。

 

11月24日に東京で行われた挑戦表明の記者会見にて。

 

生涯チャレンジャー、
成功すれば83歳での快挙

今年の夏、堀江謙一さんを取材して、等身大の堀江謙一像を紹介する月刊『Kazi』の記事を作ったときの話。事実確認のために事前に原稿に目を通した堀江さんは、タイトルに「現役セーラー」の文言を見つけて、こう言った。

「私は現役セーラーというより、1962年の航海以来今日まで『生涯チャレンジャー』だと思っています。『挑戦はあと何年くらいされますか?』と聞かれたときは、『三桁(100歳)まで』と答えているんです。まだお話しできないのですが、次の冒険はもう決まっているんですよ」

その記事は、堀江さんの日頃のヨットライフなどを紹介する記事であったため、生涯チャレンジャーというタイトルは付けなかったが、それから半年、晴れてその言葉を使いたい。成功すれば83歳での快挙となる。ルートは1962年の航海とは逆のサンフランシスコ出発、新西宮ヨットハーバー(兵庫県)ゴールで、スタートは2022年3月の予定だ。

 

11月27日、船を建造したツネイシクラフト&ファシリティーズからも近い広島県尾道市のベラビスタマリーナで行われた進水式。

 

使用艇は横山一郎設計の
エンジンなしアルミ製19ft

挑戦艇〈マーメイドIII〉は、エンジンなしの19ftセーリングクルーザー。長さは5.83mで、1962年の〈マーメイド号〉と同じ。追い風用のヘッドセールを展開するためのバウスプリット部分を合わせた全長は6.05mになる。バルブキールとストラットを合わせた重量は300kgで、総重量の約30%を占める。波風を防ぐための大きめのハードドジャーも特徴的だ。堀江さんのこだわりで、キャビン内の就寝バースから寝たままの状態でセールが確認できる小窓が設置された。

ハル(船体)は耐食アルミ板の溶接で造られている。北太平洋をセーリングする際、北緯20度以南の海域ではアメリカからアジア方面に向けて走るときに追い風となる貿易風が安定して吹くとされており、追い風が多くなることを想定した船型は、スターンがあまり絞られていない砲弾型に近い。ヒールした状態での直進安定性を増すためのチャイン(船底の角)が長く設けられている。

船体設計は、堀江さんとのタッグは4回目となる横山一郎さん。1962年の〈マーメイド号〉の設計は、父親の横山 晃さんである。耐食アルミニウム製の船体建造は、広島県のツネイシクラフト&ファシリティーズで、2008年の堀江さんの挑戦「波浪推進船によるハワイ~紀伊水道間の航海」に使用された〈サントリーマーメイドII〉の建造も担った。

 

ステアリングは、構造が単純で故障が少ないという理由でティラー式。針路保持のために電気式のオートパイロットも積むが、ウインドベーンのほうを常用する予定。ウインドベーンはドイツの「WINDPILOT」という製品で、堀江さんが過去2回の冒険で使用している。「ウインドベーンも形ができてから何十年もたって、だんだん改良されて弱いところがなくなってきましたね。信頼性は高いと思います」(堀江さん)。

 

スピネーカーは搭載しておらず、ランニング帆走時(追っ手の風での帆走時)は、ヘッドセールをメインセールと反対側に展開(観音開き)して走ることを想定している。そのためのウイスカーポールを2本搭載する。

 

デッキレイアウト図。コントロールロープはできる限りコクピットのハードドジャー内で扱えるようにリードされており、1段階目の縮帆(ワンポイントリーフ)はコクピット内からの操作で完結する。

 

内装図。寝るためのバースは左右2カ所。船底部分にライフラフト(救命いかだ)も見える。喫水は1.5mでサイズに対しては深め。

 

[サントリーマーメイドIII]
船体長:5.83m
全長:6.05m
全幅:2.15m
喫水:1.50m
重量:990kg
キール重量:300kg
素材:耐食アルミニウム
設計:横山一郎
建造:ツネイシクラフト&ファシリティーズ

 

全航程、帆走で挑む堀江さんの挑戦。所要期間は2カ月半から3カ月を想定している。〈マーメイドIII〉の詳細については、今後あらためて取材して紹介したい。

今後も月刊『Kazi』ならびに『舵オンライン』では、ほかのメディアでは絶対取り上げない、セーラー目線の情報をお届けしていく予定です。

 

(文=Kazi編集部/中島 淳)

 

1962年の最初の太平洋横断の様子を綴った航海記『太平洋ひとりぼっち』、主演の石原裕次郎など豪華キャスト、市川 昆監督で映画化されたDVDも、好評発売中です。

 


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