ルナロッサ勝利への道/プラダカップ決勝の戦い(前編)

2021.03.03

 

オークランドのロックダウンによって延期が発表された第36回アメリカズカップ。3月6日と7日の二日の延期が発表され、3月10日が最初のレースとの発表があったばかり。ルナロッサ・プラダ・ピレリ(以下、ルナロッサ)が防衛者エミレーツ・チームニュージーランドに挑む戦いは、ちょっとだけ先送りになった。
(上:photo by COR 36 / Studio Borlenghi)

 

その前に。

第36回アメリカズカップ挑戦者決定シリーズであるプラダカップ決勝を振り返ってみよう!

圧倒的な強さを見せつけて勝利したルナロッサ。プラダカップ決勝、2月12日に開始された初戦から2日目までに、驚異の4連勝を見せつけた。コロナ禍によりキャンセル、延期された2月17日を開け、レース3日目となる2月20日に開催された第5、6レース。

ラウンドロビンでは絶好調だったイネオス・チームUK(以下、イネオス)がプラダカップを逃した要因とは……。 

 

 

 ■プラダカップ決勝・第5レース/PC FR5

©www.youtube.com/americascup 

いきなりスタートから見せ場となった第5レース。スタート30秒前、風上側のエンドマークのレイラインにいたルナロッサ(左)は、さらにヘッドアップしてイネオス(右)へ攻撃をしかけた! 

 

 

©www.youtube.com/americascup 

イネオスはこの攻撃的なヘッドアップに一瞬躊躇するも、風下に落とすことを避け、風上から強引にバウをねじ込む。 ここでルナロッサからイネオスへプロテスト(抗議)! 

 

 

©www.youtube.com/americascup 

イネオスの危険な突込みにタッチダウンするルナロッサ(左)

 

 

©www.youtube.com/americascup 

この状況を分析したネイサン・アウタリッジの見解を以下に。

「ジミー・スピットヒルはレイラインにいましたが、ハイスロー(高さ重視でスピードを落とした)モードでラインエンドより風上に向かいました。スピットヒルは、ベン・エインズリーが入ろうとするスタートラインへの道を見事に遮ります。 スピットヒルたちはすばらしい戦術をとりました。エインズリーたちはこのペナルティーを解消するため、このあと困難なアタックを何度も強いられたのです」 

 

●ネイサン・アウタリッジの分析動画
↓↓↓

 

 

©www.youtube.com/americascup

先の激しいプロテストの結果、まずは両者にクロスド・ライン・アーリー=リコールが宣告される。リコールランプ消灯後、改めてプロテストジャッジが通達され、イネオスにペナルティーが宣告された

 

 

©www.youtube.com/americascup

プロテストに負け、艇速減のペナルティーを負ったイネオスは、その後復活することなく敗退した。マックススピードが明らかに遅すぎる……

 

PRADA Cup Final - Race 5
Start: 1615
Port: ITA
Stbd: GBR
Course: E
Axis: 245
Length: 1.82nm
Current: 0.2 knots @ 353
Winner Luna Rossa Prada Pirelli – 1:20

 

 

 ■プラダカップ決勝・第6レース/PC FR6

©www.youtube.com/americascup

今回は、イネオス(奥)の得意とする、すばらしいスタート。リーバウをキープし。左のバウンダリーに行く前にセパレートを強いる。第1レグを完全にコントロールした

 

 

©www.youtube.com/americascup

イネオス(左)は200m以上のゲインを持って余裕の第2レグへ

 

 

©www.youtube.com/americascup

第4レグには580m以上のアドバンテージをマーク

 

 

©www.youtube.com/americascup

全レグ、イネオス! 思わず解説者が「ビッグカンバック!」と叫ぶ。 その差は32.9秒。大きなミスがない限り盤石な最終レグに突入 

 

 

©www.youtube.com/americascup

580mあったゲインを詰められたものの、イネオス、決勝で初勝利! 

 

 

photo by COR 36 / Studio Borlenghi

満面の笑みで海上インタビューに答えるエインズリー。

エインズリー「勝利できてハッピーです。チームは、全員すばらしい仕事をしました。私たちは戦い続け、やっと1勝を勝ち取ることができました」

インタビュアー「レース前、艇速が遅いという発言をされていましたね。そのため、必要以上の攻撃が必要なように見えましたが」

エインズリー「ほとんどの人はそう見ていると思います。私たちもそう感じています。ボートスピードを向上させることは大きな課題です。私たちはあきらめません。ずっとプッシュし続けます」

インタビュアー「このレースでグラインダーたちは、地獄のようにハードな仕事をしました。今夜、彼らに飲み物をおごるチャンスですね(笑)」

エインズリー「そうですね(苦笑)。彼らにたくさんのビールの借りができました(笑)」

 

 

©www.youtube.com/americascup

軽風域では、イネオスのほうが速いということが証明された!

 

PRADA Cup Final - Race 6
Start: 1715
Port: GBR
Stbd: ITA
Course: E
Axis: 248
Length: 1.8nm
Current: 0.2 knots @ 353
Wind: 8-12knots 225 degrees
Winner INEOS TEAM UK – 0:14

 

 

photo by COR 36 / Studio Borlenghi

プラダカップ決勝レース6戦目にして、悲願の1勝を挙げたイネオス。エインズリーに笑顔が戻ってホッとしている。

この段階でルナロッサ5勝、イネオス1勝。7勝先勝の戦い。ルナロッサはあと1勝でマッチポイント。イネオス、起死回生なるか!

後編に続く。

 

(文=Kazi編集部/中村剛司) ※関連記事は月刊『Kazi』2021年4月号にも掲載予定。

バックナンバーおよび電子版をぜひ

 

 

 ■プラダカップ決勝3日目、動画はコチラ
↓↓↓

 

アメリカズカップ公式

YouTubeアメリカズカップチャンネル

DAZN


ヨットレース

ヨットレース の記事をもっと読む